恋愛なんて、するはずない。
「ある一人の男の子がいたの。



彼の名前は久巳 凉(ヒサミ リョウ)。



私が彼と知り合ったきっかけは中学二年の時。



隣の席だったんだけど、彼が私の事どこか見たことがあるって言われて、でも私は彼を見たのは初めてで。



その日、塾があってそこで彼と同じクラスだったの。



どうりでみたことがあるらしくて。



それから、ちょくちょく話すようになった。



そのうちに私もどんどん彼に惹かれて。



そんなある日、デートにさそわれたの。



私は喜んで行った。



男子と話すのは苦手だったんだけど、すごく楽しかったし、今でも覚えている。



その帰り際に彼から告白された。



私も彼のことは好きだったから付き合うことにした。



それからは毎日メールをするようになったし、塾や学校でもよく喋った。



周りからももう付き合ってるって認識されて。



彼とはプールだって行ったし、クリスマスも一緒に過ごした。



バレンタインのチョコレートも渡したし。



それが、私の初恋だった。



でも、中学三年生の時。



クラスが離れ離れになって、話す機会が減った。



メッセージも最初はよくやりとりしてたんだけど、だんだん量がえってきて、彼からの誘いもなくなったの。



初めて本気で好きになった人だから、気になって…



でも、メッセージ送ろうにもなんで送ろうかわからなかったし、会いに行こうと思ったけどなんか恥ずかしくて…



それで、噂で他の人と付き合ってるって聞いてそんな馬鹿なって思ったの。



それで放課後、コソッと彼のクラスを覗いたら、見たくもないものを見てしまった。



彼と、去年同じクラスだった人がキスしていた。



私とはしていなかったのに。



許せなかった。



でも、声をかけられなくてそのままこっそり見ていたの。



そしたら、「愛してる」とかいろいろ言ってて、私にも散々大好きだって言ってたのに。



それ以上の愛してるって言葉にイラッとして…



そんなの、ただの嫉妬なんだけど。



付き合ってたのに、私に黙って他の女といるのが嫌だった。



そしたら、そのまま…」



私は黙り込み口を噤む。



言えない。



それからのことは…



見たくなかった。



「そのまま私は何も見なかったかのよう帰ることにしたんだ。



私は、何も、見て…いない…



それから、数日後彼から別れを告げられた。



理由を聞いたら、受験だからって…



どうせ他の女と付き合ったからなのにさ。



それから、怖くなったの。



どうせすぐにさめるし、恋愛なんてただの幻だって思った。」



すると、雨ケ谷君の手が私の頬に添えられた。



「…大丈夫、もう怖くない。



そいつ、この高校じゃないだろ?



だから、泣かなくていい。」



泣く…?



私、泣いて…るの?



雨ケ谷君の手の温度が伝わる。



「泣きたいだけ、泣けばいいから。



無理にたえると辛いだけだ。



それと、嫌なこと思い出させて悪かったな…」



彼が申し訳なさそうに頭を下げる。



ダメだよ…



今、誰かに優しくされたら、涙が止まらないじゃない…



私はそのままうわぁぁぁんっと泣き崩れた。



そんな私の背中を彼はずっと優しくなで続けてくれた。


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