恋愛なんて、するはずない。
私が泣きやむと雨ケ谷がハンカチで涙を拭ってくれた。



「ごめんなさい、いきなり…」



私は恥ずかしくなり下を向く。



顔を合わせられるはずがない。



「いや、気にすんな。



それよりさ、おまえ。



その恐怖症治したい?」



「…え?」



恋愛恐怖症を、私が治したいかどうか…



「で、できるなら…」



私は小さく呟いた。



「なら、俺と付き合わない?」



「えっ!?



な、な、な、なんで!?」



頭がぐちゃぐちゃの私に彼が説明する。



「俺がおまえを一生愛してやる。」



一生…



でも、一生なんて…



私は不安で顔を曇らせる。



「おまえ、俺の事好きか?」



「えっと…」



なんとも言えない。



嫌いでもなければ、特別好きというわけでもない。



「その反応なら大丈夫だな。



本気で好きにならなければいいんだ。」



そっか…



本気で好きにならなければ傷つくことは無い。



「おまえのためにも、俺と付き合わないか?



おまえからしたら恐怖症も治せるかもしれないし、俺と付き合えば告白もなくなるだろう。



俺も同様に告白もなくなるはずだ。」



名案だ。



それこそ一石二鳥。



「わかった、私、雨ケ谷君と付き合う。」



そう言って私は雨ケ谷君の手を握りしめた。



「それじゃあ今日から、よろしくな?」



「…よろしく。」



「俺たち、恋人ってことで。」



「うん…。」


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