極上蜜夜~一夜の過ちから始める契約結婚~
「あっ! ダメ!!」
反射的に声を張ったものの、子供たちは恐るべきすばしっこさで、広場とは別方向に脱兎の如く駆けていってしまう。
「ちょっ……!」
慌てて足を踏み出すと、最初にぶつかってきた少女が、再び私に体当たりしてきた。
身体を張って行く手を阻まれ、不覚にも足が竦んでしまう。
「う……あ……」
見知らぬ街で、たった一人。
日本でも遭ったことのない犯罪に直面している。
それを自覚した途端、得体の知れない恐怖が胸を巣食った。
激しく気が動転して、心臓がドキドキと騒ぐ。
私が声も出せずに立ち尽くしている間に、その少女も他の子供たちの後を追って逃げ出した。
「あ……」
身体を雁字搦めにしていた恐怖が、一気に緩む。
その途端腰が抜けて、私は地面にへなへなと座り込んでしまった。
外国人の初老夫婦が、私になにか言いながら近寄ってきて、手を貸してくれた。
周りにいた数人の人たちが、子供たちを追いかけてくれたらしい。
英語だったから、辛うじて聞き取れた。
お礼を言ってなんとか立ち上がったものの、すぐ次の瞬間、全身の血液が足元までサーッと引いていくようなうすら寒さに襲われた。
パスポート。お金。クレジットカード。
ついでにスマホ。
海外旅行では、命の次に大事といっても過言ではない物すべてを、私は盗まれてしまったのだ。
反射的に声を張ったものの、子供たちは恐るべきすばしっこさで、広場とは別方向に脱兎の如く駆けていってしまう。
「ちょっ……!」
慌てて足を踏み出すと、最初にぶつかってきた少女が、再び私に体当たりしてきた。
身体を張って行く手を阻まれ、不覚にも足が竦んでしまう。
「う……あ……」
見知らぬ街で、たった一人。
日本でも遭ったことのない犯罪に直面している。
それを自覚した途端、得体の知れない恐怖が胸を巣食った。
激しく気が動転して、心臓がドキドキと騒ぐ。
私が声も出せずに立ち尽くしている間に、その少女も他の子供たちの後を追って逃げ出した。
「あ……」
身体を雁字搦めにしていた恐怖が、一気に緩む。
その途端腰が抜けて、私は地面にへなへなと座り込んでしまった。
外国人の初老夫婦が、私になにか言いながら近寄ってきて、手を貸してくれた。
周りにいた数人の人たちが、子供たちを追いかけてくれたらしい。
英語だったから、辛うじて聞き取れた。
お礼を言ってなんとか立ち上がったものの、すぐ次の瞬間、全身の血液が足元までサーッと引いていくようなうすら寒さに襲われた。
パスポート。お金。クレジットカード。
ついでにスマホ。
海外旅行では、命の次に大事といっても過言ではない物すべてを、私は盗まれてしまったのだ。