最後の陽が昇る日まで



「・・・終わった・・・?」


耳を澄ませてみると、今度は「ゲホッゲホッ」と激しく咳き込む声が聞こえてきた。
丁度、勝手口が近くにあったので、そっと開けて外を覗き込む。


「ゲホッゲホッ・・・っいてぇ・・・」


家の壁に寄りかかってお腹を押さえている高身長で、月夜にも分かる銀髪の同じ年くらいの男の人だった。


「あー・・・」


痛みが強いのか、天を仰いだその横顔が綺麗、と思った。
その綺麗さに吸い込まれるように、私は口を開いていた。


「・・・大丈夫、ですか?」
「!?」


バッとその人は私の方を見た。
驚かせてしまったかな、と思いながら私は勝手口の外に出て、その人に近づいた。


「怪我・・・大丈夫ですか?」
「っ近づくな」
「え、」
「消えろ」


冷たく言い放たれる。
鋭い刃となって私に飛んできたけれど、私はなんだか彼を放っておけなかった。
怪我を見てあげたいと思ったけれど、家に連れて行くわけにはいかない。
あ、と思ってポケットからハンカチを取り出した。


「じゃあ、これ・・・」
「消えろ」
「消えますから、せめてこれを」


ソッと彼に渡す。
投げ捨てられることなく彼の手に渡り、ちょっと安心する。



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