最後の陽が昇る日まで



車に乗ると、運転席に梶が乗って車が動き出す。
久し振りの外出だ。
車の中から見える景色を眺め、前見た時と違う建物だったり変わっている姿を発見する。
明るい日中だったら、またこの景色は変わっているように見えるのだろうか。
わたしにはもう見ることのできない景色だけれど。


家から車を走らせて30分ほどの距離の所に大きなショッピングモールがあった。
地下の店内の入り口に近い駐車場に止めて、車を降りる。


「ぐぅーっ久し振りのお店だ」
「あんまり伸びすると見えますよ」
「え、ちょっ」
「今は見えてないから大丈夫です」


ワンピースを着ていたことをすっかり忘れていた。
正して梶を見ると、別に気にした風もなく無表情だ。
なんだかな・・・と思いながら、店内に入った。
夜だから、そんなに客は多くない。
3階建てのショッピングモールなので、上から下に戻ることに決め、エスカレーターで3階を目指す。
3階には、映画館とゲームセンター、靴屋に子供服のなどが並んでいる。
興味が引かれる店があるかなっとドーナッツ状になっている道を歩いてみたけれど、特になかったので早々に2階に降りる。


2階は、女性物の洋服屋さんやアクセサリーショップ、雑貨屋が並んでいて、見応えのありそうな店ばかりだ。
わたしは、一歩後ろを歩いている梶を振り返る。


「ねぇ、梶」
「はい、分かっていますよ」
「ふふっ・・・梶も自分の好きな所に行っていてもいいのよ?」
「今は仕事中なので、お嬢様の側は離れませんよ」


あ、そっか。今は梶は仕事中か。
そのことをわたしは忘れていた。


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