最後の陽が昇る日まで
駐車場は、誰もいなくてシンッと静かだ。
車を待っていると、ふと、なんでわたしはここで梶を待っているんだろう?と不思議に思ってしまった。
不思議に感じることではないのに、なんだか反発してみたい気に急になってしまって、わたしは梶を待つことなく踵を返して店の中に戻った。
エスカレーターに乗って、1階に行く。そして、玄関から出ると、なんだか開放感に包まれた。
「梶に、後で怒られるかな・・・?」
でも、この開放感をもっと味わっていたい。
時計を確認してみると、朝まではまだまだ時間がある。
道路を歩いていても何の問題もない。
「このまま、ブラブラしちゃおっかな」
心の中で梶に謝りながら、しかし沸いてきた好奇心を消すことなくわたしは一歩踏み出した。
しばらく当てもなく歩く。
街は夜を明るく照らすネオンで包まれている。
周りを見ると、買い物をしている人や、仕事帰りの人など様々だ。
周りからみてわたしはどんな風に映っているのだろうか。
街を観察していると、ブーブーと鞄に入れていたスマホが鳴り始める。
見てみると、梶からだ。
わたしがいないから探しているんだろう。
「ごめんね、梶」
わたしは、ブツッとスマホの電源を切った。
GPS機能があるから電源を入れたままにしていると場所が分かってしまうから。
せっかく外出なんだ。
たまには1人でブラブラしてみたい。
いろんな場所を見て歩いていると、段々と疲れてきた。
近くにあるベンチに座って一息つく。
そして、街を眺めると、キラキラしていた。
こんな風にキラキラした世界を何も考えずに歩きたい。
これが、夜ではなく昼間だったらどんな風に映るのだろうか。