最後の陽が昇る日まで
「え、千景が・・・」
「女に、呼び捨て・・・」
「・・・・うるさい」
「?」
よく分からないけれど、彼らだけで分かる内容の話みたいだ。
そういえば、家の人以外でこんなに話をしたことはなかった。
とても新鮮だ。
悪い人たちでもないだろうし、このままもう少し話をしてみたいという気持ちにもなった。
しかし、終わりはあっけなくやってくる。
「ーーーーお嬢様!!!」
「!梶!」
ハッと声のした方を見ると、梶が走ってこちらに向かっていた。
いつも冷静沈着で表情も余り変わらない人が焦っていた。
「お嬢様、無事で・・・」
「ごめんなさい、勝手に行動してしまって・・・」
「いいです。その件は後ほど・・・怪我もないようで安心致しました」
梶は、私の姿を見ると、少し安心したと同時に、私を囲むようにいる三人に鋭いまな
ざしになる。
「あなた方は?お嬢様になにか用で?」
「あ、この人たちは、私が一人でいたから心配して話し相手になってくれていたの!」
「話し相手・・・?」
「そう、助かりました。ありがとう」
私は、三人に頭を下げる。
すると、劉生がベンチから立って手を振ってくれた。
「お迎えが来て良かったね~またね」
「はい、ありがとう」
私はもう一度頭を下げてから踵を返す。
「ーーー心晴」
「え?」
低い声で名前を呼ばれる。
誰に呼ばれたって・・・千景だった。