最後の陽が昇る日まで
体を起こせば、慣れた動作で梶が支えてくれる。
「調子はいかがでしょうか?」
「いいよ。変わりないかな」
「後で、診察に来て貰います」
「はい、とりあえず着替えるね」
「また終わった頃に来ます」
一礼して梶は部屋を出て行った。
パタンとドアが閉まってから私はベットから抜け出た。
スリッパを履いて、カーテンが閉められている窓まで歩く。
大きな窓のカーテンを片方だけ開いてみると、外は真っ暗だった。
空を見てみると、ちらほら星が見えるだけ。
カーテンを閉め直してから、私はクローゼットの方に行く。
壁一面のクローゼットを開けば、ずらりと洋服が並んでいた。
これといって私の好みの物ではないけれど、いつの間にか新しいのが入っていたりする。
きっと他の家の人が定期的に買ってきてくれているのだろう。
適当に服を選んでから、着替える。
この私の部屋は、まるでマンションの一室のようにトイレからお風呂場まで全て設備されている。
なので、必要以上にこの部屋からは出る必要はなかった。
病気になって、もう13年は経っている。
太陽の光を浴びてはいけない私は、ずっと家の中にいる。
家の中にいるだけでは息が詰まるので、時々夜に散歩に行ったりはするけれど、それだけだ。
私の世界は、とても狭い。