最後の陽が昇る日まで



不満は、ない。
それが当たり前だから。
私は、あまり感情の起伏が激しい方ではなかった。
家の人たちからすれば、我が儘も不満もあまり言わないので良かったと思っているだろう。


一度くらい、明るい内に外に出てみたい。
心の隅では、思っていたりする。
でも、そうしてしまったら自分の寿命をゴリゴリ削ってしまう覚悟が必要だ。
その覚悟は、私にはなかった。


ーーーーコンコン。


「はい」


ノックされて応えると、メイド服を着た女性がワゴンと一緒に入ってきた。


「おはようございます」
「おはよう、後藤さん」


後藤さんは、20代後半くらいの綺麗な人だ。
メイドとして働くようになっておそらく長い方だと思う。
年も近い方だし、私的には親近感を持てる人だ。


「お食事、食べられそうですか?」
「うん、大丈夫」
「良かったです」


後藤さんは、微笑んでテーブルに食事を並べてくれる。
夜ご飯は、私にとっては朝ご飯みたいなものだ。
食が細いので、量は余り食べられない。


椅子に座って、後藤さんが注いでくれたオレンジジュースを一口飲む。


「オレンジジュースおいし」
「お嬢様の好きな100%です」
「さすがです」


ジュースはやっぱり100%だよね。
もう一口飲んでから、フォークを取って食事をする。


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