幼なじみのやめ方
そう言われた気がして、ほぼ衝動的に席を立ち上がった。

「…佐藤?あ、ごめんな。俺の話ばかりしちゃってつまらなかったよな」

申し訳無さそうな顔で希勇は私を見上げてくる。

私はふるふると首を横に振ると、作り笑いをする。

「ううん。希勇と話すのはすごく楽しいよ。ただ、そろそろ戻らないと昼休み終わっちゃうから」

咄嗟についた嘘。

昼休みはまだ10分も残ってる。

ここから会社までそう遠くないから、まだ五分くらいは話せる。

希勇は私の嘘に納得すると、「大変だな」と呟いた。

無職らしい言い方だった。

私は心の底で、ほんのちょっとだけ願う。
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