エターナルリング
「緒方はただの部下。それ以外なんもないけどな。」

「結城はそうだろうが…緒方は否定もしなけりゃ肯定もしない。プロポーズしたい相手が誰なのかみんな好きに噂するだけで。」

 卓也自身は、気にしないことはとことん執着しないため誤解が生じることでも、聞かなかったら答えないスタンスでいる。

 自分のこの行動があかねにどれだけの苦痛を与えるかは、全く考えていなかった。

******
 部署に戻るとすぐに緒方から声をかけられた。

「結城主任。これ準備しておきました。」

 緒方は自分の補佐をしてくれている一つ下の後輩で、仕事は出来るが人に対しても物に対しても好き嫌いが激しく、態度にも出やすい。

 そのため、上手くコントロールするよう会社から頼まれていて、自分のところに来た経緯がある。

 卓也のことを気になっているのは、部署内みんな気がついているのに、本人は気がつかないでいる。

「あぁ。ありがとう。助かるよ。」

 ただ揃えておいて欲しい書類を準備してくれていたからお礼を言ったのだが、“ひゅ~ひゅ~”と部内から冷やかしの声がきこえた。

「うるさいよ。」

 
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