エターナルリング
卓弥には姉がいるらしく、昔の恋人にピルを飲まされて、体調を崩した苦い経験があり、そんな恋人がいるのならやめた方が良いと話したかったようだ。

「心配してくれてありがとう。」

あかねは今まで、こんな男性と出会ったことがなく、心から感謝を伝えたのだ。

ピルを飲んでるのが分かれば、男性には大抵避妊しなくて済むと喜ばれ、女性には大変だねと哀れみと、男性を喜ばせるためにあざといと思われることが少なからずあったからだ。

ただ、これだけのことだったのだ。

あかねは卓弥を、好きになれずにはいられなかった。

あれから10年。

少ない本社勤務の同期同士の集まりで季節のイベントに出席したり、二人で出掛けることもあった。

いつの間にか“あかね”と呼び捨てになり、仕事以外では“卓くん”て呼ぶようになった。

その間、卓弥に恋人がいたかは知らないが、あかねには恋人はいなかったため、交際宣言を飛び越えてプロポーズ宣言をしたことにあかねは焦ってしまった。

昼食後の仕事は全く手につかず、夜の飲み会に参加することになってしまい、あかねは自分の気持ちをどう伝えるか考える暇もなかった。
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