大嫌いな君と再会したら…
「はぁ……
本当に気づいてないのかよ。
今日のメンバー、遠藤さん以外全員、
楠さんが有希狙いなのは気づいてたよ」

「まさか」

そんな事、あるはず…ない…

と思ったところで、突然一磨に抱きしめられた。

「か、一磨?」

「有希、好きだ。
ずっと好きだった。
俺が忘れられなかったのは、有希だよ」

「え!? う…そ… 」

だって、あの時…

「あの時、誰もいない所で言われてたら、
絶対、二つ返事でOKしてた。
でも、みんなが聞いてるのを知ってたから、
なんて答えていいか分からなくて、そしたら
有希、『忘れて』って、走ってっちゃうし。
その後、口も利いてくれなくなるし。
だけど、やっと伝えられた。
有希、あれから十年以上経っちゃったけど、
俺たち、ここからやり直そう。
俺にもう一度、チャンスをくれないかな?」

だって… 私…

ずっと、一磨の事、恨んで、大嫌いって思ってて…

だけど…

「私もずっと忘れられなかった。
大嫌いだからだって思ってたけど、でも、
違った。
一磨の事が大好きだから…
好きなのに、一磨にとってはそうじゃない
事が辛くて、嫌いだって思い込もうと
してた。
だから… 」

私は一磨の背中に腕を回した。

「私… 一磨と付き合いたい。
あの時、掛け違えたボタン、もう一度、
掛け直してもいい?」

「…っ有希、もちろん。
ありがとう」

一磨はそう言うと、抱きしめた腕を緩めて、私の唇に一磨のそれで初めて触れた。

「有希、明日会いに来てもいい?」

「ん? いいけど…?」

「酔った勢いだと思われたくないから」

ふふっ
一磨ってば…

「そんな事、思わないよ。
でも、明日も会いたいから、来て?」


私たちの幸せは、ここから始まる。

今度は、ボタンを掛け違える事がないように、ちゃんと想いを伝え合って、想いを確かめ合って、一緒に歩んで行こう。

ね、一磨。


─── Fin. ───
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