密偵をクビになったので元主のため料理人を目指します!
「密偵は必要ない。護衛も必要ないと主様はおっしゃられました。ですから私はジオンに言われた通り、他に何か主様のためにしてさしあげられることがないか、探して回りました」
「言ってねえ!」
「謙遜なんて、たまにはジオンも謙虚なことをするんですね。最初は憎しみでこの男を消せたならと思っていましたが、これでも今は素直に感謝してるんですよ? ジオンのおかげで主様が城の料理を恋しく想われていることに気付けました」
「いや多分これからの俺の境遇を鑑みるに、そっちのが何倍もマシだったぜ!?」
「もう、さっきからうるさいんですけど。こっちは大事な転職面談中なんですよ!」
これだから再就職先が決まっている人は!
「主様! 主様はこの城の料理がお好きなのですよね!」
「あ、ああ。まあ、そうだね」
「私が料理人になれば遠い地でもお召し上がりいただくことが可能になると思いませんか? もう食べられないと嘆かれる必要はないのです。ですからどうか、料理修行を終えた暁には私を料理人としてお雇い下さい!」
主様は無言で美しい顔を覆ってしまった。見られたくないものでもあるのだろうか。
「サリア、まさかあの時、兄上との会話を聞いて……」
「さすが壁に耳あり窓辺にサリアあり……」
ジオンが呟いたのは私をからかう時に持ち出す失礼な格言だ。
いつもなら失礼なと目くじらを立てるところだが、今日に限っては感謝しているので拳を収めておく。
それに今の私には密偵以外で得た初めての目標がある。心が満たされたような充実感を抱いていた。
あの時、セオドアとの会話を耳にして私は思った。
主様のおはようからお休みまで、そのすべての食事を自分が作る。
するとどうなる?
食事は主様の一日の活力になる。
私の中でかちりと歯車が噛み合った瞬間だった。
これって、物凄く主様のお役に立っていませんか!?
立ちますよね!
それに、それにですよ?
主様から「美味しかった」などと褒められたらどうなりますか?
天にも昇る気持ちです!
よくやったと褒められることは多数ありましたが、考えてみれば「美味しかった」は頂いたことがありません。主様からの「美味しかった」宣言、ぜひそのお声で聞かせていただきたいと思ったのです。
「言ってねえ!」
「謙遜なんて、たまにはジオンも謙虚なことをするんですね。最初は憎しみでこの男を消せたならと思っていましたが、これでも今は素直に感謝してるんですよ? ジオンのおかげで主様が城の料理を恋しく想われていることに気付けました」
「いや多分これからの俺の境遇を鑑みるに、そっちのが何倍もマシだったぜ!?」
「もう、さっきからうるさいんですけど。こっちは大事な転職面談中なんですよ!」
これだから再就職先が決まっている人は!
「主様! 主様はこの城の料理がお好きなのですよね!」
「あ、ああ。まあ、そうだね」
「私が料理人になれば遠い地でもお召し上がりいただくことが可能になると思いませんか? もう食べられないと嘆かれる必要はないのです。ですからどうか、料理修行を終えた暁には私を料理人としてお雇い下さい!」
主様は無言で美しい顔を覆ってしまった。見られたくないものでもあるのだろうか。
「サリア、まさかあの時、兄上との会話を聞いて……」
「さすが壁に耳あり窓辺にサリアあり……」
ジオンが呟いたのは私をからかう時に持ち出す失礼な格言だ。
いつもなら失礼なと目くじらを立てるところだが、今日に限っては感謝しているので拳を収めておく。
それに今の私には密偵以外で得た初めての目標がある。心が満たされたような充実感を抱いていた。
あの時、セオドアとの会話を耳にして私は思った。
主様のおはようからお休みまで、そのすべての食事を自分が作る。
するとどうなる?
食事は主様の一日の活力になる。
私の中でかちりと歯車が噛み合った瞬間だった。
これって、物凄く主様のお役に立っていませんか!?
立ちますよね!
それに、それにですよ?
主様から「美味しかった」などと褒められたらどうなりますか?
天にも昇る気持ちです!
よくやったと褒められることは多数ありましたが、考えてみれば「美味しかった」は頂いたことがありません。主様からの「美味しかった」宣言、ぜひそのお声で聞かせていただきたいと思ったのです。