イケメンな直輝と臆病ないちご
「うわっ!」
私はそう叫んで、男の人と触れあっていた手を、物凄いスピードで離す。
心臓がドキドキとした。
「あ、悪い」
隣にいた男は特に何ともないようにそう言う。
私は男の人との免疫がないため、触れてしまった手を勢いよく離してしまったが、よく考えるとこれは結構失礼なことをしてしまったかもしれない。
……謝らなければ。
「あ、あの、すみません! 別にあなたのことが嫌いで手を離したとかじゃなくて、ちょ、ちょっと、緊張しちゃってその――」
「大丈夫。気にしてない」
男の人は私の前で手を振って、落ち着いた様子で言う。
何ともないような仕草だが、ちょっとキュンとした。
「あの……。どうして図書室にいるんですか?」
「本が好きだからだよ」
男の人はそういって笑みをこぼす。真っ白で綺麗な歯が見え、私は思わずニヤニヤしそうになった。
「そ、そうですよねっ! 本はいいですよねっ!」
緊張しているせいか、私は本なんて何か月も読んでいないにも関わらず、そんなことを言ってしまう。
……まあでも嘘じゃないよ? 本の匂いとか好きだし。
「へー。……じゃあ、今、手に取ろうとした本は興味がそそられたものなのかな?」
「えっと、違います。私は今、本棚の整理をしているだけで、その本に興味があるわけじゃないです」
「どうして本棚の整理なんてしてるの? ……あ、もしかして図書委員なのかな?」
「いや、図書委員ではあるんですが、図書委員の任務ではないですね。色々と事情がありまして……」
図書委員をサボりにサボって下された罰が本棚の整理なんて、口が裂けても言えない。私は、下手な誤魔化しをした。
――本好きのイケメンの前で、委員会活動を不真面目にやっているなんて、誰が言えるか!