イケメンな直輝と臆病ないちご
図書室は静かだった。どうやら私以外に人がいないみたいだ。
出来ることであれば、他の図書委員の人に本棚の整理を一緒に手伝ってもらおうという私の考えは、打ち砕かれた。
もう委員会は終わってしまったのだろうか? だとしたら、私は居残りで本棚の整理をしなければならなくなる。
……でも、やらない訳には行かない。もしここでサボって帰ってしまったら、あの先生のことだから、これ以上に酷い罰を私に与えるだろう。
しかも、その罰はこれからの私の人生に密接に関わる可能性だってある。
何故なら、あの先生は平気で停学や退学という罰を、私に与える可能性があるからだ。
私はテーブルの隙間を抜け、本棚が並んだところまで歩いた。そして、本の整理を始める。
本の位置は、確かに先生が言っていたとおりバラバラだった。適当に手に取った本が、大抵ちゃんとした順番のところに並んでいない。
……これらを直すには相当時間がかかりそう。無理にでも好美を引き留めておけばよかったかも。
私はため息を小さく吐き、次の本に手を伸ばすと、どこからか伸びていた私のではない大きな手に触れる。それはゴツゴツとしていて、強張っていた。
「え?」
私は驚き、間抜けな声を出す。
「へ?」
いつの間にか右隣にいた人も、間抜けな声を出した。
図書室には私以外誰もいないと思っていたが、どうやらそれは私の勘違いだったみたいだ。
いつの間にか私の右隣にいたのは、高身長で、鼻が高く、背筋がしっかりと伸びていて、色白で、清潔感がある身なりの人だった。
……なんていうか、イケメンの部類に思いっきり入る男の人。
そんな男の人と私は手が触れてしまったのである。