身ごもり秘夜~俺様御曹司と極甘な政略結婚はじめます~
結婚する、と意思を確認はした。仕事が忙しいとは聞いていたが、それは閑も同じだし、さほど問題はないと思っていた。
まったく、問題ありだった。
どれだけ会う約束を取り付けようとしても、はっきり予定がわからないまま一向に話が進まない。連絡を無視することはないから、嫌がられているわけではなさそうなのに、何か必死でこちらが追いかけているような気にさせられてくる。
メッセージに既読が付くのも遅いし返信も忘れた頃にあったりする。電話はなかなか繋がらない。
――普通、いくら忙しくてもこんなに連絡が取れないなんてあるか? どれだけ仕事が優先なんだ。
まるで思考回路が、仕事ばかりの彼氏に構ってもらえない彼女のようだ。
「ドレスの試着が必要だから、とにかく一度会わないか?」
そうメッセージを送ったのは、いつだったか。色々と面倒な結婚準備の中で、一番花嫁側が盛り上がるのがドレス選びだ。これなら少しくらい、琴音も積極的に時間を作ろうとするんじゃないかと期待した。見事に裏切られたが。