身ごもり秘夜~俺様御曹司と極甘な政略結婚はじめます~

「……私の妻も、仕事に忙しい女性でしたが。長くそういう状況にひとりでいると、頼り方もわからなくなるのかもしれませんね」
「……なるほど」

 そういうものか、と納得するとやはり増えそうにない彼女の着信履歴の数は諦めて、スマートフォンをスーツの内ポケットに入れた。



 それから数日。待てど暮らせど彼女からの返信はなく、ついに閑の堪忍袋の緒が切れた。
 埒が明かないので、直接会いに行ってしまおう。

 閑は幸いながら何事にもマメで、相手が動けないなら自分が動けばいいという比較的柔軟な思考だった。
 ただ、女性に関してはこれまで自分から積極的に関わろうとはしなかった。それはいずれ、染谷の姉妹のどちらかと結婚するかもしれない未来を考えていたからかもしれない。

 現実にそうなった以上、歩み寄るための努力は必要だ。彼女にその余裕がないなら、自分が機会を作ればいい。
 いや、それよりも。若い女性をそれほど遅い時間まで、婚約者と連絡もつけられないほど馬車馬のように働かせる会社は一体なんなのだ。

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