身ごもり秘夜~俺様御曹司と極甘な政略結婚はじめます~
「琴音には急なことで、戸惑いだらけだとわかってる」
不安を取り除くのは自分の仕事だ。言葉を尽くさなければと、そう思った。
「不安なことは、何でも俺に言って欲しい。すぐに解決できることばかりではないかもしれないが、琴音には出来るだけ憂いなく嫁いできて欲しい」
上手く伝わっただろうか。子供の頃は、ただ手を引いてやるだけで満面の笑みが見られたの
に、大人になるとそれだけでは難しい。
「大丈夫です。私、ちゃんと楽しみにしてます」
笑った琴音に無理をしている様子はないかと、慎重に見つめていると彼女も懸命に言葉を返す。料理を習うつもりだと話してくれたのには、心を擽られた。
別に、料理など下手でもいいし作っていればそのうちそれなりになるものだと思う。けれど、自分のために習おうとしてくれることが嬉しいのだ。
彼女と話すほどに、これまで感じたことのない熱が胸の奥に生まれてくる。温かな気持ちになれるのは、なぜだろうか。
そして無意識に、無防備にこちらを煽るような表情と言葉を使うことには、この先悩まされることになる。