身ごもり秘夜~俺様御曹司と極甘な政略結婚はじめます~


 結婚までまだ少しの時間はある。
 いや、結婚がゴールなのではなく、寧ろそこから先は長いのだ。

 ――あせらせないように、怖がらせないように。できるだけ彼女のペースで。無理のないように穏やかに距離を縮めていければいい。

 その為にも、結婚式の後には短期間でも休みを取って、向き合う時間を作ろうか。そうするには、式の二か月ほど前から色々と根回しをしなければいけない。

 ――しなければいけないことが山積みだな。

 だが不思議と煩わしいとは思わない。相手は自分で選んだものの、必要に迫られた結婚に変わりはない。なのに、迫るその日を楽しみにしている自分に気が付いた。

 彼女の心が、ゆっくりと自分に傾いて来てくれているのは、会うたびに実感できる。それなのに、もう少し、もう少しと距離を詰めたくなる自分はきっと、それ以上のスピードで彼女に魅かれている。

 結婚するまでは――。

 男慣れしていなさそうだ、ということもあるが、それはあまり関係ない。ただ、大切にしたいという気持ちの方が大きい。それを懸命に守ろうとした閑の心の箍はある日あっさり外れた。
 それは、琴音によって。


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