身ごもり秘夜~俺様御曹司と極甘な政略結婚はじめます~
唇を擦り合わせ、彼女の舌を吸い上げた。びくびくと震える身体が、愛おしい。
とてもとても、愛おしい。
――ああ、参った。
今すぐ抱きたい。その衝動のままに琴音の身体に手を伸ばしてしまいそうになる。このままどこかへ、連れ込んでしまってもいいだろうか。
絡み合わせる舌の音が、頭の中に響いてそれすら媚薬のように脳を痺れさせていく。唾液を啜って混ぜ合わせて、彼女の唇の端から零れたそれを指で拭った。
きっとこのまま抱いても、彼女は抵抗しない気がした。それでも堪えたのは一重に、欲しいのが身体だけではないからだ。妻という存在だけではないからだ。
今はただ閑の行為を必死で受け止めるだけで精一杯なように見える。今はそれでいい。だがいつかはちゃんと、琴音の心が欲しい。
ゆっくりと夫婦になろうと誓ったはずなのに、思いもよらず焦れて苦しくなるのはどうやら自分の方だった。
――式まであと二週間。
琴音が実家に戻り、仕事も式前日まで立て込んでいる。当日まで会えそうにないが、かえってそれでよかったのかもしれない。
止まりそうにない欲を押し殺してキスをしながら、閑は頭の片隅で考えていた。