身ごもり秘夜~俺様御曹司と極甘な政略結婚はじめます~
「そりゃ、人それぞれでしょうけれど。え、琴音さんも早く欲しいんですか?」
「いや、まだそこまでは、考えられなくて……」
「ですよね。すぐに出来ちゃうよりしばらくは新婚生活を満喫したいでしょう?」
「そういうことでもないんだけど……」
うーん、と悩みながら頬杖を突き、チューハイのグラスを手に取る。ちびっとひとくち含んで、また唸った。
とにかく今は、あの毎日甘ったるい閑を受け止めることで、琴音の頭はいっぱいだ。
まさか、こんな結婚生活になるとは思わなかった。あの初夜以降、琴音は閑に本当に大切にされている。
新婚旅行の間中、彼はべったりとくっついて離れなかった。慣れない海外旅行で不安もあった琴音だが、おかげで怖いと思うこともなく旅慣れた彼の傍にいれば困ることなど何もなく楽しめた。
そして何より、とても甘い。甘ったるい。
旅行から帰って日常に戻り、仕事に忙しい彼は、平日は一緒に夕食が食べられる日とそうでない日が半々くらいだろうか。しかし、休日は必ず家に居て四六時中琴音について回る。
これまであまりできなかったのだからと、毎週デートにも連れ出してくれる。
琴音としては、とても嬉しい。これから努力して距離を縮めていけたらいいと思っていたことが、閑の方から積極的にしてくれている。同じ気持ちでいられたことが嬉しいのだが……真面目な閑のことだから、無理をしているのではないかともちらりと思ったりする。
――自然に、仲の良い夫婦になれたらいいんだけどな。
といっても、何が自然なのかと聞かれればわからないのだが。ただ、無理をして後から閑が重荷に思うようなことになったら嫌だ。