身ごもり秘夜~俺様御曹司と極甘な政略結婚はじめます~

「今日も母さんが来たんだな」

 帰宅した閑が、鍋に入った筑前煮をキッチンで温めている。筑前煮は優子が持ってきてくれたものだ。
 琴音は、今は匂いに敏感になり過ぎて、キッチンに立てない。強い吐き気で、身体が震えて来てしまう。

「俺から、あまり来るなともう一度言っておくよ」
「大丈夫。そんなに嫌な話はしてないよ。ご飯が作れない私の代わりにおかずを置いていってくれるし」

 優子に悪意がないのはちゃんと伝わっている。けれど、今の閑ならかなりきついことを言ってしまいそうで、今日の会話のことは黙っておくことにした。
 生まれたらきっと、男でも女でも優子だって喜んでくれるはずだ。そう信じているから、出来る限り仲違いはしたくない。

「俺は別に、レトルトでもなんでもいい」
「そんなわけにいかないってば。お仕事大変なんだから、ちゃんとしたのを食べてください。お義母さんのお料理、美味しいね」
「食べられたのか?」
「少しだけ、お昼に」

 そう言うと、閑はほっとして表情を緩めた。

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