身ごもり秘夜~俺様御曹司と極甘な政略結婚はじめます~

「ちょっとでもいいから、食べられそうなものは何でも食べてくれ。心配でしょうがない」

 閑がキッチンから出て、ソファでクッションに顔を押し付けている琴音に近づく。足音でわかって、琴音は目元だけクッションを外した。

「つわりは赤ちゃんが育ってる証拠だと思うようにしてる」
「少しずつ痩せて、毎日気が気じゃない」

 閑がソファに腰を下ろす。ふと、不思議に思って、閑の手を見れば手ぶらだ。おかずの皿も茶碗も持っていない。さっきまで、キッチンで料理を温めていて、それから今出てきたばかりのはずだ。

「閑さん、ご飯は?」
「もう食べた」

 さらっとそう言う閑に、琴音は目を見開いた。

「いつのまに?」
「キッチンで食べた。その方が、匂いがこっちまで来なくていいだろう?」

 何でもないことのように閑は言うが、琴音は愕然としてしまった。それから、すぐに申し訳なくなって、泣きたい気分に襲われる。

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