身ごもり秘夜~俺様御曹司と極甘な政略結婚はじめます~
「ごめんなさい、疲れて帰って来てるのに、温めることもできないしそんなとこで食べさせるし」
「琴音は気にしすぎだ。現状、何の問題もなく健康な俺が琴音を気遣うのは当たり前だ」
「閑さんは気遣いすぎです!」
クッションにふたたび顔を全て隠し、膝の上に突っ伏した。
だめだ、本当に、泣きたくなってくる。専業主婦で家にいるのに、閑にばかり気を使わせてしまっているのだ。
近頃、感情の起伏が激しい。これもつわりのせいだろうか。
ソファの上で、猫のように丸くなっていると、閑の手がぽんぽんと背中を叩いた。
「つわりがおさまったら、どこかにでかけよう。その時には、俺が食べたいものに付き合ってもらおうかな」
「……わかりました。食べたいもの、あるの?」
「……きゅうりが入ってなければなんでもいいかな」
きゅうりが入ってないものなんて、探せばいくらでもありそうだ。入っていても、きゅうりくらい抜いてもらうことも可能そうな気がする。
つまりは、琴音を励まそうと言ってくれているだけなのだ。
「ふふっ」
思わず笑ってしまった。