身ごもり秘夜~俺様御曹司と極甘な政略結婚はじめます~

「この時期、スーパーに行ったらきゅうりがどこも山積みで嫌になる」
「きゅうりなんて年中置いてあるじゃない?」
「それでもワゴンで大量売りしているのはこの時期くらいだろう」

 どれだけきゅうりが嫌いなのか。くすくす笑っていると、少しだけ吐き気がおさまったような気がする。
 閑には助けられてばかりだ。

 つわりがおさまったら、今度は閑の好物ばかり家で並べることにしよう。外で食べる食事には特に好きなものはないみたいだが、家では結構、好みがはっきりしている。

 和食ならみそだれの風呂吹き大根や厚揚げの田楽、揚げ物は魚が好き。お味噌汁は麹味噌が好きだし、フライものかけるならソースよりも醤油派だ。

 パスタならトマトソースで、チーズがたっぷりのもの。

 今は、想像しただけで吐き気を催してきてしまうが、つわりは一時的なもの。直ったら、ちゃんと感謝の気持ちを込めてたくさんご飯を作ろう。

「琴音、何か飲むか?」
「レモン水が欲しいです……」

 今は素直に甘えよう、と思ったその時、琴音のスマートフォンが着信を知らせて振動した。

 音を消しておいて正解だった。閑は気付いていない。
 閑が立ち上がり、キッチンまでレモン水を入れに行っている間に、琴音はルームウェアのポケットからスマートフォンを取り出す。
< 190 / 239 >

この作品をシェア

pagetop