身ごもり秘夜~俺様御曹司と極甘な政略結婚はじめます~
姉、可乃子からの通話着信だった。
二宮家に琴音の妊娠が知られてから、当然染谷にも黙っているわけにはいかず、そこから可乃子も知るところとなったらしい。
最初は、メッセージだけだった。
【おめでとう。赤ちゃんができたんですって?】
あの喧嘩以来、まともな会話もメッセージのやりとりもない。ただ、お互い気まずい感情で結婚式の日に会話しただけだ。
あのときも、おめでとう、だった。琴音はありがとう、と言ってすぐに目を逸らした。
それきり、きっと、何かきっかけができるまで連絡は取り合わないような気がしていた。
なのに、なぜ、という疑問が沸いて、また何か嫌なことを言われるのかと身体が強張ってしまう。
祝いのメッセージには簡単に、わざと素っ気なく感じるほどの礼のメッセージを返信してそれでまた疎遠になる。それでいいだろうと思っていた。正直、今の琴音に可乃子のことまで考えている頭の余裕はなかったのだ。
しかしなぜだか数日経ってまた、メッセージが来たのだ。
会いたい、と。
会いたくない。絶対いやだ。可乃子の声など聞きたくないし、聞いて冷静にいられる自信はない。ただでさえ、妊娠してから情緒不安定気味だというのに。
今、琴音にとっては優子との子供の性別を巡るあれこれよりも、可乃子一人の方が最大のストレスだった。
出たくない。話したくないから、通話はいつも気づかなかったフリをして、あとからごめんねとメッセージだけ送っている。
それだけで、話したくないのだと察してくれたらいいのにどうしてこう何度もかけてくるのだろう。