溺愛旦那様と甘くて危険な新婚生活を
プロローグ
プロローグ
花が好き。
どんな時も癒してくれ、見るだけで元気になれる。
道端や花壇で懸命に咲いている花も花屋でお客さんを待つ花も、幸せな人に持たれ誇らしげに咲くブーケの花も、そして少し枯れそうな花も………。
どんな花も魅力があり、枯れてしまっても「元気にしてくれてありがとう。」と思える。
そんな花が大好きだった。
けれど、今日は違った。
初めて、花を見ても何とも思わなかった。
まだ春になったばかりの冷たい雨が降る中も賑やかに咲くタンポポ。それを見ても笑顔になる事はなかった。
「これから………どうしよう。」
そんな風に思うだけだ。
どんなに花が好きでも、花を世話しても花は助けてくれない。
ただ「私を見て。」と言うだけだった。
そのタンポポに手を伸ばして、ブチッと茎を切りタンポポを掌に乗せた。
雨に濡れた手にタンポポの悲しげな緑の汁がついた。それも雨水によって流されていくが、鼻にはいつまでも青臭い香りが残っている。
感情のままにそのタンポポを握りつぶそうと指に力を入れる。
けれど、花びらに指が触れた瞬間、冷たいはずのタンポポが妙に暖かいのを感じた。
そこには、知らない人の手があった。
その温かさを知った時。
自分はもうこのぬくもりから離れられない。
そんな予感を感じた。
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