溺愛旦那様と甘くて危険な新婚生活を
次の日、花霞はけだるさを覚えながら、目を覚ました。
すると、いつものような優しい表情の彼が申し訳なさそうな表情でこちらを見ていた。
花霞は、「椋さん……。」と、名前を呼んだけど、声が少し掠れていた。
「水、飲む?」
「……うん………。」
椋が準備していてくれたペットボトルを受け取り、1口だけ水を体に流した。もっと飲みたいとも思ったけれど、それよりも先にしなければいけないことがある。そう思って、花霞は手を止めた。
花霞は椋に甘えていた。
心のどこかで、彼ならば許してくれる。そんな考えがあったのだろう。
彼は止めて欲しいことを事前に教えてくれていた。それなのに、花霞は約束を破ってしまった。椋が怒るのは当たり前の事なのだ。
それなのに、約束をやぶっておきながら、勝手に彼を怖いと思ってしまった。
裏切っておきながら、体が震えてしまった。
それを、しっかり謝っておきたかったのだ。
花霞はギュットペットボトルを握りしめた。
そして、彼を見つめて「ごめんなさい」の気持ちを伝えようと思った。
「椋さん……。」
「ごめん。痛かった、よね?」
椋はそういうと、花霞の手首を見つめて壊れ物に触れるように手を添えた。
そこを見て、花霞自身初めて自分の手首が赤くなっている事に気づいた。
「あ…………。大丈夫です。痛みはないですし。それに、私の方こそごめんなさい。………約束を破ってしまって。」
「………あの部屋には入ってはダメなんだ。」
「あ、あの…………窓を閉めるとき、少しだけ見えてしまったんですが、地図や新聞の切り抜きって………何か探し物をしているの?椋さんは、警察の仕事をしているの?」
「………………それは………ごめん。」
花霞はその返事から、どちらも違うのだとわかった。彼は嘘が隠すのが上手なはずなのに、この時だけは、違った。
少しの迷いと、戸惑いがあるようだった。