溺愛旦那様と甘くて危険な新婚生活を
★★★
倒れるように寝てしまった、花霞を椋は呼吸を整えながら見つめていた。
彼女の目から頬にかけては、涙の跡がついていた。
自分の書斎に花霞が入ったのがわかった瞬間。
椋は恐ろしさから気が動転してしまった。
彼女はどうしてこの部屋に入った?
彼女は何を見て、何を知った?
それが、恐くてしかたがなかったのだ。
それから思ったのは、彼女をもう2度とここに入れてはダメだ、という事だった。
だからこそ、彼女に「お仕置き」として、あんなにも酷い事をしてしまったのだ。
彼女は自分の表情と態度、そして行動に怯えていた。そして、謝りながらも椋のした事に必死に耐えていた。
終わった時の疲れきった顔と、泣き腫らした瞳。
そして、自分が拘束した手首は赤くなっていた。
「もうしたくない。…………だからと言って、まだ君を手離したくない。」
椋はぐっすりと眠っている、彼女の頬についた涙の粒を指で優しくすくった。そして、彼女の汗で額にはりついた前髪を、整えてる。
そして、花霞にゆっくりと近づき、彼女を起こさないように、頬に触れる程度のキスを落とした。
それは、謝罪のためだったなのか、は「おやすみ」のキスだったのか。椋にはわからなかった。
「お願いだ。俺を知ろうとしないでくれ。」
椋はそう独り呟くと、ゆっくりと寝室を後にした。