溺愛旦那様と甘くて危険な新婚生活を
そこは変わらずカーテンが引かれた薄暗い部屋だった。花霞は、電気をつけて彼の机への足を運んだ。
この書斎には、花霞の知らない椋の事が沢山あるはずだと思ったのだ。
椋が隠したいものを見るのには抵抗はあったけれど、あんな怪我をしてまでやっている事を、花霞は知りたかった。
始めに目をやったのは、壁に貼ってある地図だった。
いろいろな場所のものが貼ってあるが、すべてこのマンションからそんなに時間がかからずに行ける場所だった。車を使えば数十分で行けるだろう。
書き込みは、×が多かったが、その場所には日にちも確認してあり、最近のものもあった。
○の部分には「夜、数人」や「中わからず」など、それだけでは理解出来るものはなかった。
そして、机に目を向ける。
すると、前に入った時よりも乱雑になっているのがわかった。そこには、様々な新聞やネット記事が置いてあり、花霞はそれを見ようとしたが、引き出しから何か挟まっているのを見つけた。
花霞はそれが気になり、一番上の引き出しを開けた。すると、挟まっていたものが写真だと
わかった。花霞との写真であったが、その下にも沢山のものがあった。
ドレス姿の花霞やタキシード姿の椋のものや、デートの時のものもあった。けれど、その一番下にあったもの。それは、花霞の知らない椋だった。
「わぁ………警察官の制服だ。初めて見た。」
そこには、警察官の制服を着て微笑む椋の姿があった。隣りには、知らない男の人がいた。同じ制服だったため仕事仲間なのだろう。そちらの男性もとても楽しそうに笑っていた。
「知らない椋さんだ。………それに、少し若い。」
日付を見ると、5年前だった。
若い椋は髪も短く、今よりも少し活発そうに見えた。今はどちらかというと落ち着いている印象だった。
その写真だけは少し角がよれたり、汚れていた。他の写真はないので、それだけが花霞が写っていないものだった。
どうしてこの写真だけ混ざっているのか。花霞は疑問に思いながらも、その写真も元の場所に戻した。