溺愛旦那様と甘くて危険な新婚生活を
やはり、彼は不思議な人だった。
出会ったばかりの時もそうだったが、彼と話すと安心してしまうのだ。恥ずかしかったはずなのに、彼ならば大丈夫、と思ってしまうのだ。
それが、彼の柔和な雰囲気からなのか、それても優しさなのかわからない。
けれど、彼の職業が警察というのは、ピッタリだなと花霞は思った。
「ご飯とか、洗濯とか……看病とか。本当にありがとうございました。このお礼はいつか必ずします。今は持ち合わせがないので、また後日にでも………。お洋服が乾いたら、出ていくので………。」
「………この家に一緒に暮らしませんか?」
「………ぇ……?」
お粥をいただいた後は、この人の家からすぐにでも出ようと思った。
お金がなかったら、理由を説明してお金を借りたり、職場の人に相談すればいい事。
いつまでも、見ず知らずの警察官にお世話になるわけにもいかないのだ。
もういい大人だ。一人で生きていかなければいかない。
そう思っていたが、目の前の彼は思いもよらない事を話し始めたのだ。
あまりの言葉に、しずくは言葉を失った。
昨晩会っただけの人に、同棲を誘われたのだ。絶句していると、男は更に言葉を紡ぎ始めた。
「な、なんでそんな事を………。」
「優しさには理由がある、と言いましたけど、確かに警察官だと言う理由の他にあるんです。」
「……………理由、ですか?」
その男は、にっこりとした雰囲気と変わって、真面目な雰囲気でこちらを見た。
そして、まっすぐな視線で、花霞の瞳を見据えた。
「僕と結婚してみませんか?」
真面目な言葉でそういう男の言葉を、花霞は口をあんぐりと開けて、見つめるしかなかった。
花霞の初めてのプロポーズされた相手は、名前も知らない男だった。