溺愛旦那様と甘くて危険な新婚生活を
その後は、ひたすら歩いて歩いて歩いた。
椋らしき男性の後ろ姿を見つければ必死に走り、様子を伺ってこっそり顔を見てはがっかりする。そんな事が何回も続いた。
1時間ほど歩くと、さすがに足ががくがくし、汗もかいてしまい、途中にあった木製のベンチで水を飲みながら休憩をした。今日は走ったり、歩いたりと、椋を探し回っていたからか、足がいつもより浮腫んでいるように感じた。だが、疲れは全く感じないのだ。
それよりも、早く椋を見つけたい。
その一心だった。
「あと少しで折り返し地点だけど………。最後までよく見た方がいいよね。」
少しずつ夕暮れになってきた赤い空を見つめながら、花霞は小さく息を吐いた。
ここまで歩いてきて、椋の姿は全く見当たらず、事件など起こりそうもないぐらいに平和な様子だった。どこまでも可憐な紫色の花がゆらゆらと揺れている綺麗な場所で本当に何かあるのだろうか。
起きませんように、と願うばかりだった。
先ほどは、椋の姿ばかり探してしまったけれど、今度は人がいないような目立たない場所を探そうと花霞は思った。