溺愛旦那様と甘くて危険な新婚生活を
キラリッと何かが光るのを感じ、花霞は一瞬視線をトラックや高級車が停まる方向へと向けた。
すると、どこかから来た車のライトがこちらに当たって何かに反射しているようだった。
それを見た瞬間、ヒュッと喉が鳴った。
静かに近づく椋の気配に気づいたのだろう。
高級車に乗っていた、数人のスーツの男が、椋の方向を見つめて、胸元から拳銃を取り出していたのだ。
花霞は「ダメ………ダメ………やめて…………。」と、小さな声が出る。そして、必死に腕を伸ばして、椋の元へと必死に駆け出した。
それで撃たないで。
椋を殺さないで。
椋は近づく花霞に気づかずに、憎しみの強く鋭い視線を恰幅の良い男に向けている。
「ひぃやまぁぁっっーーーっっ!!」
怒声が聞こえた。
それは、低く震える声で、花霞は椋が発した叫び声だと気づくのに遅くなったほど彼の怒りがこもっているものだった。
檜山と呼ばれた男は、そこでやっと椋の存在に気づいたようで、怒りながら拳銃を向けている椋を見ても、ただ面白い物を見るようにニヤリと笑うだけだった。
それもそのはず。檜山の前に盾になるボディーガードが数人立っており、拳銃が当たる心配もないと思っているのだろう。しかも、そのボディーガードは全員が拳銃をすでに構えていた。
誰が見ても、椋が撃たれてしまうとわかる状況だった。
もちろん、花霞も同じだ。
けれど、花霞は諦めなかった。