溺愛旦那様と甘くて危険な新婚生活を
「俺が嫌いなタイプじゃないのなら、いい話だと思いますよ。」
「……そんな事を急に言われても……。」
「それに半年だけでいいです。9月になったら、離婚してもらっていいです。もちろん、お金を請求することもしません。半年だけの契約結婚です。」
「…………半年だけの契約結婚………。」
今の状況でさえ常識では考えられない事だったが、彼が話している事は更に非常識な事だった。
けれど、花霞の心は何故がぐらついていた。
玲との突然の別れ、そして、仕打ちを思い出すと、呼吸が荒くなる。彼の冷たい視線が今でも感じられるようだった。
それなのに、目の前の彼と居ると気持ちが落ち着くのだ。誰かと一緒に居たい。今は、一人で過ごしたらどんなに苦しいだろうか。そんな風に思ってしまうのだ。
それは、自分への甘えだともわかっていた。
玲の気持ちが離れていっているのにも気づかず、そしてお金の管理も出来ていなかった、自分にも責任があるのは理解している。
けれど、今だけは……少しだけでも甘えたかった。
誰かの声と、視線と、体温を感じられる部屋に居たかった。
「………わかりました。半年だけ、なら。」
気づくと、花霞の口は勝手にそう呟いていた。
自分でもそんな判断をするとは思っておらず内心驚いてしまう。けれど、その言葉を撤回しようとは思えない。
花霞の気持ちはすでに決まっているのだ。