溺愛旦那様と甘くて危険な新婚生活を






 眩しさから目を閉じる。
 そして、すぐに目を開けようと思ったけれど、今度は瞼が重く感じてしまう。
 ゆっくりと目を開けると、今度はほどよい光りを感じた。温かい、ぬくもりのある光りだった。

 けれど、体が酷く重くなっている。
 先ほどふわりと飛んでいた軽い体が嘘のようだった。


 「………………。」


 花霞は、目線だけで周りの様子を確認する。
 白い天井に、白いレースのカーテン。そして、見たこともない機械が光っていた。
 そして、懐かしい香りもする。これは花の匂いだった。花霞が毎日この香りに包まれて仕事をしていた。仕事………あぁ、花屋をしていたんだった。そんな風に一つ一つの事を思い出しながら、花霞は天井を見つめていた。

 体はどうも動かない。

 けれど、温かさを感じる部分がある。左手がとても温かいのだ。そのせいか、そちらは少しだけ指を動かせるようだった。
 力を入れると、少しだけ指先が動いた。
 すると、視界の端で何がごそりと動いた。


 「……………ん………少し寝てしまったか………。花霞ちゃん、暑くない?」
 「………………ぅ……………。」


 眠たげに目を擦っている男の人。
 そして、自分の名前を呼ぶ声。

 それを感じて、花霞はどうしてここに自分が居るのかをやっとの事で思い出した。
 彼と話したい。彼の名前を呼びたい。もう1度、手を握って欲しい。

 その思いで、必死に声を出した。
 すると、思った通りの声は出なかったけれど、何とか発することは出来た。




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