溺愛旦那様と甘くて危険な新婚生活を
花霞が目を覚ましたのは、事故から5日目の事だった。峠は越えたというのに、花霞はなかなか目覚めなく、医師も椋も、そして栞や滝川も心配していた。
そのため、花霞が目覚めたと知って皆が喜んでくれていた。
まだ、体を自分で動かす事は出来なかったけれど、椋が看病をしたり、世話をしてくれたので、順調に回復していた。
「目覚めたときに感じたのは、このお花のおかげなのね。」
「そうだよ。みんな見舞いにくる時に花を持ってきてくれたんだ。それに、栞さんは花霞ちゃんが好きだからって部屋中に飾ってくれたんだ。」
「栞らしいな………。でも、嬉しい。」
花霞の病室には、いたるところに花のブーケが飾られており、小さな花屋さんのようだった。部屋に入ってくる看護師さんやお医者さん達はいつも驚くほどだった。
「…………早く花屋で働きたいな。」
「もう少しリハビリをしなきゃな。」
「………椋さんは?お仕事しなくていいの?私の看病してくれるのは嬉しいし、寂しくないから幸せだけど。」
「大丈夫だ。夜に済ませてるよ。」
「……………椋さんは、警察の仕事が好きなんだよね?戻らないの?」
椋は、遥斗と一緒に警察を目指したはずだ。
カッコいいヒーローのような警察を。
それなのに、遥斗が死んでしまったことで、椋は警察を辞めてしまったのだ。
辛い思い出が多い仕事かもしれない。
けれど、椋の夢はきっと警察になる事だったはずだと花霞はずっと考えていた。
「………確かに俺の夢は警察だし、遥斗も同じだった。けど、やはり危険が伴う仕事だ。君を残して死ねないって思う。花霞ちゃんを守りたいんだ。」
「…………椋さん。」
「それに、今の方が稼ぎもいいんだ。花霞ちゃんをもっと幸せに出来るはずだよ。」
冗談を交えながらそういう椋の少しの変化に気づかないほど、花霞は鈍感ではなかった。
花霞は怒った顔をして、椋に言葉を投げ掛けた。