溺愛旦那様と甘くて危険な新婚生活を
1話「冷雨とたんぽぽ」
1話「冷雨とたんぽぽ」
春がもう少しでやって来るという冬の終わり。皆が暖かくなる日を待ちわびて、少しずつ明るい色の服を着たり、花見の予定を立てたりするこの時期。
この日は夕方から、冷たい雨が降っていた。
仕事が終わり、早く彼がいる家へ帰り、温かいご飯を作って2人でゆっくりしたいな。
そんな事を花霞は思い、急ぎ足で自宅へと歩いていた。
けれど、待っていたのは酷い現実だった。
玄関のドアを開けた瞬間、彼が珍しく出迎えてくれた。嬉しく思ったの束の間、彼の海外旅行用の大きなスーツケースを差し出された。
「俺と別れてくれ。」
「え…………。」
「そして、今すぐにこの家から出ていってくれないか。」
「な、何を言ってるの………?」
3年前に付き合い始め、すぐに同棲した恋人である玲は、めんどくさそうに茶色の髪をクシャクシャとかきながらこちらをジロリと睨んだ。
「もうおまえとは付き合えないって言ってんの。俺、新しい彼女出来たから。」
「そんな、私何も聞いてないよ。それにすぐに出ていけだなんて。どこに住めば………。」
「あー、おまえ実家もないもんな。まぁ、友達のとこ行けばいいんじゃね?」
「………玲………。」