溺愛旦那様と甘くて危険な新婚生活を
遥斗が呼吸を荒くしながら体育館裏に到着する頃には、すでにケンカの決着はついていた。
卒業生なのか学ランを着くずして着ている学生が、数人地べたに這いつくばっていた。苦痛を堪えた顔や、呻き声が聞こえてくる。
その中で悠然と立っているのは遥斗だった。だが、数人対1人でケンカをしたのだ。彼も無傷ではなかった。顔を殴られたのか、頬が赤く腫れ上がり、唇の端が切れていた。
ケンカ直後だからか、彼は気が立っている様子でいつも見かけている様子とは違って、更に怖い雰囲気を纏っていた。
「……………」
「おいっ、そこのガキ。何見てんだよ」
低い声で椋が遥斗に向かってそう言い放った。すでに彼は遥斗に対して敵意を持っているのが伝わってきた。
けれど、遥斗はただ椋を見に来たわけではないのだ。
全く怖くなかったわけもなく、もしかしたら殴られてボコボコにされるかもしれないとも思った。けれど、きっと彼は根はイイ人なんだ。遥斗は何故かそう強く思えた。
「かっこ悪いですよ!」
「………は?」
「本当に強いくせにケンカでしか力を出せないなんてかっこ悪いです!」
「…………何言ってんだ、おまえ?」