溺愛旦那様と甘くて危険な新婚生活を
それが終わると、花霞はゆっくりと歩いて帰る。
どんな人が亡くなったのかわからない。
けれど、その人の事を思って帰る。
今は笑顔でおじいさんを見ているのだろうか。それとも生まれ変わって違う人生を生きているのだろうか。そんな事を考えながら帰る、この時間は花霞の暮らしの一部分となっていたのだった。
花屋に戻る頃には、辺りは真っ暗になっていた。
「ただいま戻りました。」
掃除道具と枯れた花を抱えながら店に戻る。
すると、いつものように返事が返ってくる。
「あぁ、おかえりなさい。」
「花霞ちゃん。お疲れ様。」
花霞の言葉への返事が2つあり、そして、馴染みのある声に、花霞は驚いて顔を上げた。
すると、店内には何故か椋の姿があったのだ。
椋はシャツに黒ズボン、そしてジャケットという仕事帰りであろう服装で、花霞を出迎えた。
驚き固まる花霞を見つめながら、椋はにこやかに手を振っていた。