溺愛旦那様と甘くて危険な新婚生活を
今日は、花霞と栞だけで仕事を回す日だ。そんな時はいつも閉店まで残業をしていたのだ。けれど、栞は「大丈夫よ。今日のピークは終わったから。」と、言って、さっさと花霞のエプロンの紐を取ってしまう。
「わかった。じゃあ、お言葉に甘えて帰らせてもらうね。ありがとう、栞。」
「いいのよ。……………椋さん、いい人じゃない。話して安心したわ。花霞が惚れちゃうのも納得だわ。それに、本当にかっこいいじゃない。」
「えっ…………。」
栞は小さな声で耳元でそういうと、クスクスッと笑った。花霞はこっそりと椋を見つめるが、彼は店内の花を見て歩いていた。
椋には聞こえてないとわかり、花霞はホッとした。
栞が椋と話をしていたのを聞いて、花霞は内心ドキドキしたが、栞も認めてくれたようで安心した。
サバサバしている彼女と椋は、きっと性格が似ているだろうな、と思っていたけれど、仲良く話す様子を見て、それを改めて感じた。2人が仲良くなってくれるのは、嬉しいことだ。
花霞はバックヤードに入る前に、2人がまた何かを話しているのを見て、微笑んだのだった。
花霞が着替えを終えて椋の元へ向かうと、彼は花束を持っていた。それは少し前に、栞に頼まれて花霞が作ったものだった。
「お待たせしました。………あの、椋さん、それは……。」
「実は、俺がこの店に電話して予約したんだ。花霞ちゃんが作ったブーケが欲しかったから。」
「そんな………。いつでも作るのに。」
「じゃあ、時々花霞ちゃんにお願いしようかな。家に花があった方が花霞ちゃんも嬉しいだろうし。」
「…………うん。嬉しい、かな。」
「じゃあ、決まりだ。」
少し頬を染めながら花霞が返事をすると、椋も同じように笑った。
そして、花霞の荷物をさりげなく持って、栞に「また、お邪魔します。妻をよろしくお願いします。」と、挨拶をして店を出た。
「ごめんね、栞。」
「いいのよ。こっちがいつも手伝って貰ってるんだから、気にしないで。椋さんと仲良くね。」
「ありがとう。」
花霞も彼女に手を振って、店を出た。
栞は目を細めて嬉しそうな顔で見送ってくれていた。