溺愛旦那様と甘くて危険な新婚生活を
花霞が花束を花瓶に入れて、リビングに飾った。花は好きだけれど、自分で花を買って部屋に飾ることはあまりなかったなと思った。
ましてや、自分が選び作った花束を自宅で飾るとは考えたこともなかった。
花を見つめながら、妙に恥ずかしくも、心地のいい気持ちになった。
彼の気持ちや考えに感謝しながら、花を見つめた。
「あの花屋さんみたいな、家。いいよね。」
「え?栞のお家?」
「そう。あんなこじんまりとした家。憧れるんだ。少し街から離れた、静かな街でひっそりと穏やかに暮らすの。」
栞の店は、一戸建ての家になっており。店以外は住居スペースになっている。栞は「借金まみれだよー!」と、言いながらも店を持ったことがとても嬉しいようで、バリバリ働いている。そんな彼女はとても輝いて見えた。
彼女の家は、確かに小さいけれどぬくもりのある家だった。
けれど、椋が憧れているのは少し意外だった。
「椋さんはこのマンションの部屋を買ったんですよね?こういう夜景が見えたり、街中にあるお家が好きなのかと思ってました。」
「んー……夜景は綺麗だし。住みやすいけどね。ここに住んでいる理由は違うんだ。」
夕食の支度が終わったのか、椋は話をしながらリビングの大きな窓に近づき、手を添えながら夜景を見ていた。
「この街が好きだったから………見守りたいって思ってるんだ。」
「……………。」
彼の横顔はとても神妙で、夜の空が見える窓に映る椋の表情はとても悲しそうだった。
椋の言葉の意味を聞くことも出来ず、花霞は静かに色とりどりに輝く光を共に見下ろす事しか出来なかった。