溺愛旦那様と甘くて危険な新婚生活を
本当ならば、部屋に入りたかったけれど、この家に初めて来た日の事を思い出すと、花霞は勇気が出なかった。椋はこの部屋の話をした時だけは、視線が冷たくなり、表情も陰りがあったのだ。きっと、この部屋に入ってしまったらば彼は怒ってしまう。
そうしたら、この穏やかで幸せな生活が崩れてしまいそうで、花霞は怖かったのだ。
そのため、ドアノブに触れることすら出来ずに、花霞は寝室に戻って彼がこのベットに来る前に寝てしまったのだ。
そして、最近では出張や夜遅くまで働く事が度々あった。警察で働いているため忙しいのは理解していたけれど、帰ってくると時々険しい顔をしていた。
その表情は、彼が自分の書斎から出てくる時と同じぐらい暗いものだった。
気になるならば聞いてみればいいとは思っていたけれど、なかなか彼に問いただせるものではない。警察の仕事となれば、口外できない物も多いだろう。
そう思いながらも、椋の体調が心配になってしまうのだった。
「…………。」
「花霞ちゃん?………大丈夫?ぼーっとしてるけど、疲れてる?」
「え……あ、ごめんなさい。考え事してた。」
リビングで夕食後に寛いで居る時に、花霞は考え込んでしまっていたようで、椋は「何回も、呼んだんだよ?」と心配そうに声を掛けてくれた。「大丈夫。」と、花霞が何回か説得すると、椋はまだ気になっている様子だったけれど、彼の話の続きを教えてくれて。