溺愛旦那様と甘くて危険な新婚生活を
15話「楽しかったはずの思い出」
15話「楽しかったはずの思い出」
玲と会ったのは、あの日以来初めてだった。
突然、別れを告げられ、部屋を追い出されたあの日。
椋に会うことになったあの日。
「どうして、こんなところに………。」
「………花霞に会いに来た。」
「そんな、だって……今更………。」
「少しだけ話がしたいんだ。」
「……………わかった………。」
玲はあの頃の何ら変わってはいなかった。
気だるげな話し方と、横目でちらりと人を見る癖。そして、よく髪型を気にして頭を触っている。
花霞の前を歩く彼は、恋人だった頃の玲だった。
「おまえ、今どこに住んでるんだ?まだ、友達のところ?」
玲が話し始めたのは、駅から程近い人気の無い公園だった。小さな公園で、遊具も少ない。たった1つのベンチに座り、花霞と玲は話をした。
「ううん。もう家で暮らしてるよ。」
「………早いな。何でそんな金あるんだよ。」
「それは………。」
玲に自分が結婚したことを話そうか、花霞は迷っていた。元恋人が別れてすぐに結婚したなんて聞いて、いい思いをするはずがなかった。
黙り込んでしまった花霞を見て、玲は「何だよ。ったく………。」と、舌打ちをした。