溺愛旦那様と甘くて危険な新婚生活を
確かに、別れる前は彼との関係は冷めきっていたかもしれない。けれど、付き合い始めの頃は、とても優しくはにかみながら、頭を撫でてくれたり、手を繋いでくれたのは、玲だった。
仕事で上手くいかない時は、夜遅くまで話を聞いて慰めてくれたし、花霞が作った料理を「うまい!」と言って何回もおかわりをしてくれた。初めての誕生日プレゼントは1日をかけていろんな店を周り、悩んで決めてくれた。
そんな彼だから、3年も一緒に居れたと思っていた。
別れ方は最悪だったかもしれない。
けれど、花霞にとっては自分が愛した1人の男性であり、特別な存在だった。
別れてしまったとしても、楽しかった思い出だけは忘れたくない。そう思っていたはずだった。
それなのに………最後の最後にしてもいない事で怒鳴られている。
玲が浮気をして、自分を捨てたというのに………。
花霞は、涙が出てきて止まらなかった。
あぁ、どうして大切な人のまま別れさせてくれなかったんだろうか。
家を追い出されて、お金を取られても、玲と別れたのが辛くて泣いていた。けれど、それを忘れさせてくれた人のおかげで、今は笑っていられる。
もし、彼と出会わなければ、花霞はまだ終わってしまった恋に涙していたかもしれない。
それぐらいに切ない失恋だった。
それで終わらせてくれた方がよかった………。
花霞は、涙を流しながらジッと目の前の彼を見た。