溺愛旦那様と甘くて危険な新婚生活を
花霞は、そんな気持ちを感じながらフッと自分の感情がどうしてここまで落ち込み悲しんでいたのかを考えてしまった。
他の人から見たらたかが結婚指輪なのかもしれない。それに、椋とは大恋愛の末の結婚なんかではなく、会って数日で契約的に結婚をしただけなのだ。しかも、半年という期間が終われば、離婚となるかもしれない。
そんな関係のはずなのに、花霞は彼との繋がりにすがってしまう。
それはどうしてなのか。
今まで、自分でも気づき、そして彼に伝えようと思っても、気持ちに気づかないふりをしていた。
「椋が………好き………。好きだよ………。」
今まで我慢してきた気持ちが溢れ出たかのように、その言葉を繰り返した。
頼まれたから結婚した。家がないから結婚した。
そうかもしれない。けれど、それは1つのきっかけに過ぎないのだ。
それで結婚をしたとしても、椋でなければ、惹かれる事もなかっただろうし、この日々を終わらせたくないと思う事もなかっただろう。
花霞はそうだと思った。
優しくて、頼りがあって、花霞を思ってくれる。笑顔が素敵で、その微笑みを花霞にも分けてくれようと、花霞のためにいろんな事を伝え、教え、共有しようとしてくれる。
そんな彼に惹かれてしまっていたのだ。
彼と出会い、結婚出来たことが、今は幸せで仕方がない。
「椋さん…………。会いたい…………。」
ザーッという雨の中。
花霞の小さく震える音は、誰にも届いていないかに思えた。
けれど、必死になり花霞を探している彼には、今すぐにでも届けたい。
花霞はそう思った。