溺愛旦那様と甘くて危険な新婚生活を



 水音と2人の吐息。

 シーツがすれる音と、ベットの軋む音。

 それの音たちが、花霞の耳に届き、目の前には彼の顔、そして彼の匂い。

 すべてで彼を感じらて、花霞は幸せなはずなのに、切なさも感じてしまう。
 不思議な感覚と気持ちよさに、つい瞳から涙が溢れてしまうと、椋はそれにすぐに気づき、「大丈夫?」と言いながら、指で涙を拭ってくれた。


 「何だか、幸せだなって………幸せなのに………もっと欲しくて切なくなるの。」
 「………花霞ちゃんは欲しがりだね。」
 「ん…………。」


 話ながらも、彼の動きは止まらず、花霞は甘い声が出そうになる。すると、彼は「声、我慢しないで。」と、言ってくるのだ。その言葉を何回言われてしまっただろうか。けれど、つい恥ずかしさから我慢してしまうのだ。


 「でも、俺ももっと欲しい。だから、花霞ちゃんをもっとくれたら。俺もあげる。」
 「………あげる。………あげるから、もっと椋さんが欲しい。」
 「うん………。」
 「っっ…………ぁ……………。」

 
 そう言い終わらないうちに、彼は花霞の体を激しく求めた。
 花霞はすぐに快楽の波に飲み込まれる。これで終わりではない。もっと彼を感じられる。もっと彼に触れていられる。


 それがわかると、花霞は安心してしまう。



 「…………花霞、好きだ。」
 「うん………大好き、椋さん………。」



 2人は熱を帯びた声で、言葉を重ねて、何度も何度も求めた。



 それは、2人が本当の恋人になった日の初めの夜であり、本当の夫婦になった瞬間でもあった。


 その長く甘い夜は、2人を幸せな時へと変えてくれた。





< 89 / 223 >

この作品をシェア

pagetop