人間サイコロ
「今度はなんて書いてあるんだ?」


横になったままのイクヤが声をかけてきた。


相当しんどいはずなのに、まだ意識を保っていたようだ。


イクヤの生きたいという気持ちがそうさせているのかもしれない。


「イクヤ……」


「次はユウの番だったんだろ? 内容は?」


そう聞かれて、あたしは一瞬黙り込んでしまった。


視力を失ってしまったイクヤに、これ以上辛いことを伝えるかどうか悩んだのだ。


「頼むよユウ、教えてくれ。カウントダウンも始まってるんだろ?」


そう言われて、あたしは画面へ視線を戻した。


イクヤの言う通り、カウントダウンはすでに始まっている。


ミッションをクリアする度に時間が減っているから、もう2分くらいしかない。


「……ゴキブリに食べられることだって」


あたしは沈んだ声で答えた。
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