人間サイコロ
イクヤは壁をたよりにどうにか立ち上がると、あたしの体を抱きしめてきたのだ。


その行動に頭の中は真っ白になってしまった。


イクヤから離れないといけないのに、体が動かない。


「イクヤ……ダメだよ。ゴキブリに襲われちゃうよ!」


手の平ほどもあるゴキブリはあっという間にあたしとイクヤの周りを取り囲んでしまった。


そして、一匹、また一匹を体を這い上がって来る。


怖気が走るような感触にあたしは強く身震いをした。


イクヤにも、この気持ち悪さを伝わっているはずだ。


それでもイクヤはあたしの体を離そうとしなかった。


それどころか、イクヤはあたしの体を押し倒したのだ。


「ちょっとイクヤ、なにするの!?」


イクヤはあたしの上に覆いかぶさり、抱きしめた。


ゴキブリはイクヤの体の上を這いまわり、蠢き始めている。
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