人間サイコロ
「いっ!」


途端に声を上げたかと思うと、イクヤの耳の辺りから血が流れ出した。


ゴキブリが噛みついたのだ。


「ダメだよイクヤ! どけて!!」


イクヤがなにをしようとしているのか理解し、あたしは必死にイクヤの体を押しのけようとした。


けれど、イクヤの体はビクともしない。


逃げようとすればするほど、イクヤはあたしをキツク抱きしめてくるのだ。


絶対に離すまいとする力は、あたしではどうにもあらがうことができない。


「俺がいると、きっと邪魔になるから……」


体のあちこちをゴキブリに噛みつかれながらイクヤは言った。


「なに言ってるの……」


イクヤの言葉に思わず涙が溢れだした。


両目を失ったイクアは自分から死を選ぶつもりだ。


少しでも、あたしの役に立ってから……。


「邪魔になんかならないよ! だから今すぐどけて!」
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